愛奴(Intimate Confessions Of A Chinese Courtesan)



1972年。邵仁枚製作。楚原監督。何莉莉、貝蒂、岳華主演。
邵氏のトップ・スターである何莉莉をヒロインに起用した、異色のレズビアン武侠映画。
1973年の「世界10大名作」に選ばれた。
2003年12月、アテネ・フランセにてDVD上映(日本語字幕無)。
2005年1月、日本版DVD(邦題:エロティックハウス 愛奴)が発売。


レズビアンやSMを取り上げた、当時としては異色の作品ながら、格調高い仕上がりを見せている1品

妓楼へ売り飛ばされた少女・愛奴(何莉莉〔リリー・ホー〕)が、妓楼の人間や客たちに変態的な辱めを受けます。
復讐を誓った愛奴は、レズビアンで武術の達人である妓楼の女将・春姨(貝蒂〔ベイ・ティー〕)と関係を結び、女将から学んだ武術で次々と殺人を遂行していくという、「毒婦もの」のような匂いのする物語です。

1996年に『中家電影物知り帖』で本作を紹介した宇田川幸洋氏は、石井輝男監督の「異常性愛路線」映画と本作との関連を指摘していますが、たしかにそれもうなづける箇所がいくつか見られます。
石井輝男監督の作品といえば、呉宇森(ジョン・ウー)監督の『狼 男たちの挽歌・最終章(喋血雙雄)』(1989年)が、石井監督の『ならず者(中国語題・雙雄喋血記)』(1964年)の影響を受けているという話がよく知られており、他にも、『直撃!地獄拳 大逆転』(1974年)と『悪漢探偵(最佳拍〔木當〕)』シリーズ(1982〜89年)の影響関係を指摘する批評もあります。
今後は、1970年代以降に邵氏で撮られたエロティックな作品群との関連も、考えてみる必要がありそうです。

主演の何莉莉(1946〜。1952年説もあるが疑問。リリー・ホー。英文名・Lily。本名・何〔イ利〕〔イ利〕)は、1960年代後半から70年代前半にかけて活躍した女優。
1963年、邵氏にスカウトされて台湾から香港へ渡るものの、しばらくは不遇時代が続きます。が、1967年に公開された『香港ノクターン(香江花月夜)』の長女役で注目を浴び、以降は、文芸作品やコメディ、ミュージカルを中心に、アクションや武侠映画にも主演、邵氏の看板女優の一角を担う存在となります。
1972年、『十四女英豪』でアジア映画祭優秀演技賞を受賞しますが、翌73年、香港の富豪と結婚、引退しました。
「香港ドリーム」を地で行くような人生を送った女優といえるでしょう。

監督の楚原(1934〜)は、日本の香港映画迷には『ポリス・ストーリー 香港国際警察(警察故事)』(1985年)の悪役や、『月夜の願い(新難兄難弟)』(1993年)における劉嘉玲(カリーナ・ラウ)の父親役を演じていた男優として、むしろおなじみかも知れません。
広東語映画の名優・張活游を父に持ち、1956年に自身も映画界入り。代表作に『大丈夫日記』(1964年、1989年)『七十二家房客』(1973年)等があります。夫人は、やはり広東語映画の名女優・南紅です。

香港のエロティック映画というと、日本では1989年の作品指定制度改定以降の、いわゆる「3級片」(R-18)ばかりが取り上げられがちですが、この時代(1970年代初頭)、すでにこのような作品群(本作や李翰祥監督の「風月片」等)が、邵氏のようなメジャー映画会社で堂々と製作されていた、その事実はきちんと認識しておくべきでしょう。
そして本作は、その中でも特に傑出した作品として、記憶されるべき映画だと、わたくしは思っております(とりあえづ了)。


付記:
1、ウラ感想文をBlogの方に書きました。そちらもお読み下されば、幸いです。
2、『愛奴』というタイトルを持つ映画は、日本にもありますが、ここから直接ヒントを得たかどうかは不詳です。



主要参考文献:
『邵氏電影初探』(2003年、香港電影資料館)。
『戯非戯』(鄭佩佩、1998年、明窗出版社)。
『中華電影物知り帖』(『キネマ旬報』臨時増刊。1996年、キネマ旬報社)。





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