生きてゐるダイヤ 1
(『戦後秘話 宝石略奪』)


主なスタッフ
企画:俊藤浩滋、吉野誠一、安斉昭夫 監督:中島貞夫
原作:菅原通済 脚本:中島貞夫、金子武郎
撮影:山沢義一 美術:中村修一郎  
音楽:富田勲 録音:広上益広
編集:長沢嘉樹  照明:大野忠三郎
スクリプター:藤井善男
主なキャスト
山田慎一:菅原文太 大原大伍郎:小松方正
関正直:小池朝雄 黒木:丹波哲郎
ニセ黒木:戸浦六宏 中村潔:高城淳一
村山松子:松井康子 山田絹子、村山静子:橘ますみ
売春婦:賀川雪絵 宗:若山富三郎
岡村弥六:片岡千恵蔵 道斉:菅原通済



あらすじ


太平洋戦争が終わり、戦地から復員した山田慎一(菅原文太)は、妹の絹子(橘ますみ)が戦後の混乱によって売春婦(劇中ではパンスケ)に身を落とし、脳梅毒にかかって手遅れの状態になっていることを知ります。
まもなく妹は亡くなり、山田は仲間の売春婦が妹と同じような目に合わないよう金を渡し、「これで足を洗ってくれ」と懇願しますが、鼻で笑われてしまいます。
このため、山田は売春婦という職業を憎悪するようになり、日本全土から売春婦を撲滅するために金儲けをすることを決心します。

そんなある日、三国人(これも今となっては差別表現なのですが、劇中の表現に従います)と闇物資の奪い合いをしていた闇屋の大原(小松方正)を救った山田は、大原の信頼を得て相棒となり、大原の愛人・松子(松井康子)が住む別宅に居候することになりました。
山田はまもなく松子と関係を結びますが、松子の娘で亡き妹と瓜二つの静子(橘ますみ)は山田に思いを寄せ、山田も静子に惹かれていくのでした。

大原は、政界の黒幕である元シナ浪人の岡村弥六(片岡千恵蔵)に多額の上納金を納めており、その金を政治家が闇資金として流用するという構図が出来上がっていました。
やがて、闇屋から足を洗った大原は製鋼会社社長となり、保守党政治家の関(小池朝雄)との癒着を深めていました。
一方、山田は大原から松子と別宅を譲り受け、料亭の経営を始めますが、稼いだ金は売春婦を救うために使い、「売春婦に転業資金をやる男」として有名になっていました。

同じ頃、岡村のもとに、イギリス人・ジャクソンが、日銀地下に保管されていた時価50億円という巨大ダイヤ「グレート・モンゴリア」を持って現れ、「これを日本の未来のために使って欲しい。さもないと、アメリカにとられてしまうぞ」と言い、岡村にダイヤを託します。
岡村は、自宅を訪れていた山田にグレート・モンゴリアと護身用の手榴弾を渡して、これをマカオの宗(若山富三郎)に預かってもらうよう頼み、成功したら200万円やると言います。
この申し出を引き受けた山田は、グレート・モンゴリアを持ってマカオへ向かいますが、グレート・モンゴリアのことを嗅ぎ付けたアメリカの諜報機関が岡村の家へ現れ、岡村は逮捕されてしまいました。
そして、関や大原、岡村の秘書の中村(高城淳一)、元海軍軍人の黒木(戸浦六宏)もグレート・モンゴリアの存在に気づき、その所在を探り始めました。
無事マカオへ着いた山田は、宗にダイヤを渡して帰国、宗の預り証を持って岡村邸へ行きますが、逮捕が原因で健康を害した岡村は、すでに息絶えた後でした。

グレート・モンゴリアを狙う関たち4人は、マカオからこれを取り戻して、転売した金を分ける計画を立て、もう一度山田をマカオに送ります。
しかし、それぞれがそれぞれに金を独り占めにしようと謀略をめぐらせた結果、中村と黒木は命を落とします。

再び宗のもとを訪れた山田に宗は、「このダイヤを現金で買える人はいない。だが、麻薬にかえれば現金化できる。しかし、岡村との約束があったので、自分はそれをしなかった」と語り、「ダイヤを狙っている人がいると危険なので、レプリカを作らせた。箱の中にはレプリカを入れ、本物は常に身に付けておくように」とアドバイスをしました。

宗の車で港へ送ってもらう途中、山田は謎の男に襲われて負傷、娼家の前で力尽きて倒れてしまいました。
買春婦(賀川雪絵)は山田を助けようとしますが、山田の話す日本語を聞いて、つばを吐きかけます。彼女は、戦時中日本軍に両親を殺されていたため、日本人を憎んでいました。売春婦は憎しみのあまり、意識が朦朧としている山田に麻薬を打ってしまいます。

一方、大原は松子とヨリを戻していましたが、関の謀略によって警察に逮捕され、松子は自殺に追い込まれます。

すっかり麻薬中毒になった山田は、麻薬の売人を探して街をさまよい、モンテの砦で売人と待ち合わせます。
そこへ現れた男(丹波哲郎)こそ、実は本物の黒木で、日本で死んだ黒木は真っ赤な偽物でした。黒木は山田に「自分と組まないか?」と持ちかけ、山田はその申し出を承諾します。
山田は、グレート・モンゴリアを自らの太腿に埋め込み、マカオを後にするのでした。

松子が死んで料亭の女将となった静子は、関から「山田は死んだ」と騙されて、関の愛人になります。

日本へ帰った山田は、真っ先に静子のもとへ向かいますが、そこには関と逢引している静子の姿がありました。怒った山田は、関を殴ってその場を立ち去ります。殴られて倒れた関は、打ち所が悪く発狂してしまいます。

山田は、黒木と取引をするため、現場に赴きます。が、山田の差し出したグレート・モンゴリアが偽物であったことがばれ、山田は拷問を受けます。
山田は護身用の手榴弾を炸裂させて逃亡、岡村の友人である道斉(菅原通済)に電話をして、「俺が死んだら、太腿からダイヤを取り出して、そのダイヤの金で日本中の売春婦を助けてくれ」と告げます。
車を強奪した山田は道斉の所へ急ぎますが、幻覚症状に襲われ、車もろとも谷底へ転落して亡くなります。

しかし、グレート・モンゴリアは、いまだに日本中をさまよっているそうです。





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