反共映画のはずが・・・・ 1
(『金門島にかける橋』)

主なスタッフ
製作:中井景 企画:李潔
監督: 松尾昭典、潘壘 助監督:千野皓司
脚本: 山崎巌、江崎実生 撮影: 岩佐一泉
音楽: 黛敏郎 美術: 中村公彦
録音: 沼倉範夫 スクリプター: 斎藤耕一
照明: 藤林甲
主なキャスト
武井一郎:石原裕次郎 楊麗春:華欣(王莫愁)
高木かおる:芦川いづみ 松阪和男:二谷英明
王美蘭:唐寶雲 王哲文:大坂志郎
劉上尉:武家麒 王小栄:山内賢
張:李影 頼:李冠章

 



あらすじ

1958年秋、中国共産党軍と国民党軍の軍事衝突(第2次台湾海峡危機)が続いていた台湾海峡を、貨物船ドラゴン丸は最後の寄港地である金門島に入港するため航行していました。
船医の武井一郎(石原裕次郎)は、船の甲板に佇みながら、4年前に出会った一人の女性のことを思い出していました。

−1954年、日本の大学病院で朝鮮半島から送還されてくる国連軍兵士の治療にあたっていた武井は、従軍記者である恋人・王雄世を探しに来た楊麗春(華欣)と出会います。彼女の恋人は、残念ながら亡くなっていました。
恋人の死を知った麗春は気を失ってしまい、それを武井が介抱します。
麗春をした後、武井は脳腫瘍の患者の手術に立会いますが、脳腫瘍というのは実は誤診で、脳栓ソウだった患者は麻酔薬の過剰投与が原因で手術中に息を引き取りました。執刀した教授は誤診の事実を隠そうとするものの、武井が真相を告白、それがもとで彼は大学病院を追われます。
子供の頃、戦争で父を失った武井は、高木製薬社長の援助を受けていました。社長の娘である高木かおる(芦川いづみ)は、武井に思いを寄せており、高木社長も武井とかおるを結婚させようと考えていましたが、武井は結婚も今後の援助もいっさい断って、社長との縁を切ります。
孤立無援の身となった武井が、親友でジャーナリストの松阪和男(二谷英明)とタクシーに乗っていると、車の前に一人の女性が飛び出してきました。それは、恋人を亡くし失意のあまり街を彷徨っていた麗春でした。
麗春を自分のアパートへ連れ帰った武井のもとを、かおるが訪ねてきます。武井が大学病院を辞めたことを知ったかおるは、父の出資で新しい病院を作り、そこの院長になればいいと提案しますが、武井はその申し出を断ります。
と、そこへ麗春が姿を現し、二人の仲を勘違いしたかおるは部屋を飛び出して行ってしまいます。
翌日、麗春を連れて東京観光へ出かけた武井は、自分の父も戦争で亡くなったという身の上話をしながら麗春を励まし、彼女に真珠を一粒プレゼントします。武井のおかげで生きる希望を取り戻した麗春は、ぶじ台湾へと帰っていきました。

その後、武井は仕事を探すものの、大学を追われた身ではなかなか職を得ることは難しく、無医村の医師を1年間勤めた後、けっきょく船医になることを決心、ドラゴン丸に乗り込んだのでした・・・・−

と、そのとき、砲撃を受けて沈没した漁船の漁師が、ドラゴン丸に救助を求めてきました。
武井は負傷した漁師・頼(李冠章)の手当てをしますが、指定ラインを超えて操業していた漁師たちを捕えに、国民党兵士がドラゴン丸に乗り込んできました。
武井は「見逃してほしい」という漁師たちの願いを聞き入れ、彼らを逃がしてやります。

ドラゴン丸はぶじ金門島へ入港、島へ降り立った武井は、松阪と再会します。松阪は金門島の漁師を取材するために、島に来ていたのでした。
島へ着いた早々、武井のもとへかおるからの手紙が届きますが、武井はそれを読まずに捨ててしまいます。かおるは、武井が船医になった後、武井と別れたことを深く後悔していました。
そんな時、街を通りかかる一人の女性の姿を、武井の目が捉えました。あれは、まぎれもなく麗春です。武井は彼女の後を追いかけますが、横丁から現れた一人 の青年(山内賢)に腕を引かれ、漁業組合の建物へ連れて行かれます。そこには、怪我をした漁師がいました。武井は漁師の治療を行います。

武井を追ってやって来た松阪は、戦乱に巻き込まれた漁師たちの悲惨な状況を世に訴えようと取材を試みますが、そこへ現れた漁業組合長の王哲文(大坂志郎) に、「自分たちは共産党軍と戦争するしかないんだ。あんたたち日本人には、私たちの気持ちはわからない。ほうっておいてくれ!」と一喝されます。松阪は仕 方なく、その場を立ち去ります。

漁師の治療を終えて建物を出た武井は、ついに麗春と再会します。武井を組合の建物へ連れてきた青年は麗春の弟・小栄、麗春の亡くなった恋人・王雄世は、王 哲文の息子だったのでした。麗春は島の小学校で教師をしながら、哲文の家で弟や哲文の娘である美蘭(唐寶雲)と一緒に暮らしていました。

武井と麗春は4年ぶりに二人だけのひと時を過ごし、麗春は日本で武井に貰った真珠をネックレスにして肌身離さず付けていたことを武井に告白します。
武井のおかげで生きる希望を取り戻せたという麗春は、暗い影を引きずって生きるようになってしまった武井に、「昔のあなたみたいに明るくなって。私の夢を壊さないで」と訴えます。
武井は、そんな麗春を思わず抱きしめますが、麗春は「いけない」と言うと、足早にその場を立ち去るのでした。

翌日、麗春の働く小学校を訪れた武井は、彼女にプロポーズをし、結婚の許しを得るために哲文と会います。
哲文は武井に、自分は大陸にいたとき日本軍の空襲で足を負傷し、それ以来足が不自由になったので今でも日本人を憎んでいるということや、目の前に見える故 郷・中国大陸にもう一度帰りたいが、そのためには共産党軍と戦わなければならないということ、そして、麗春が島に駐留している国民党軍兵士・劉上尉と今度 の双十節に台北で結婚式を挙げる予定だということ等を話します。
自分と麗春を隔てる壁の大きさに気づいた武井は、彼女のことをあきらめる決心をします。

と、そこへ、またしても共産党軍の爆撃が襲い掛かり、麗春の弟・小栄が負傷してしまいます。
武井は急遽手術を行いますが、台北の設備の整った病院へ移送することになり、小栄に付き添って台北へと向かいます。

その頃、台北には、武井を追ってやってきたかおるの姿がありました。
かおるは松阪のもとへ武井への連絡を頼む旨の電報を送り、それを読んだ松阪は台北に飛び、武井にかおるのことを知らせます。
実は、松阪はかおるに思いを寄せているのですが、彼女の幸せのため、武井と結ばれることを願っていたのでした。



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