反共映画のはずが・・・・ 2
(『金門島にかける橋』)




あらすじ(続き)

台湾大学病院へ移送された小栄の傷も癒え、武井と麗春は台北でこれが最後となるであろう二人の時間を過ごします。
ふと立ち寄った龍山寺で、麗春が投げた神杯は「吉」。居合わせた老婆が武井に、「おめでとう。二人は永遠に結ばれますよ」と中国語で話しかけますが、武井にはその意味がわかるはずもありませんでした。
「今日はずっと二人でいたい」という麗春に「タバコを買いに行く」と告げた武井は、そのまま一人、姿を消しました。

傷心のままホテルへ戻った武井を、かおるを連れた松阪が出迎えます。「帰ってきて」と懇願するかおるを頑なに拒絶する武井に対して、松阪の怒りが爆発します。

1958年10月10日の双十節。台北の中山堂では、麗春と劉の結婚式が執り行われようとしていました。
麗春は、武井への思いを断ち切ろうと思い出の真珠のネックレスを外しますが、しかし、武井へのこみ上げる思いを抑えることはできず、一人式場を抜け出します。
さらに、劉にも急遽出動命令が下り、結婚式は延期になります。
何も知らずに中山堂へやってきた武井は、美蘭から麗春がいなくなったことを聞き、麗春を探しに行きます。

一方、武井の泊まるホテルへ現れた麗春は、そこで松阪とかおるに出会います。
松阪から「武井はこの人(かおる)と結婚する。もうこれ以上、武井の気持ちを惑わさないでくれ」と訴えられた麗春は、その場を立ち去るしかありませんでした。

入れ違いにホテルへ戻った武井は、かおるからたった今麗春が出て行ったとの話を聞き、再び街へ出ますが、けっきょくすれ違ってしまいます。
武井は彼のもとへやってきた美蘭に、午後4時30分の列車で高雄へ行き、金門島行きの船に乗ると麗春に伝えてほしいと頼み、台北をあとにします。
武井を追って高雄へやって来た麗春と美蘭は、間一髪で金門島行きの船に乗船することができました。

出動命令を受けて金門島へ戻った劉は、哲文に麗春との結婚式が延期になったことを報告し、麗春が本当に愛しているのは武井だと告げますが、それを聞いた哲文は、激怒します。

そのとき、武井たちを乗せた上陸艇が共産党軍の爆撃を受けて沈没しそうになり、武井は負傷した松阪と一緒に海へ飛び込みます。
一足先に島へ上陸した麗春と美蘭は、哲文に武井たちを助けるよう頼みますが、日本人を憎んでいる哲文はそれを拒みます。しかし、「個人的な怨みから、そんなことを言うものではないわ!武井さんは、私たちの命の恩人よ!」という娘の叱責を受けると、哲文は漁師たちを率いて船を出し、海上で逃げ惑う人々を助け出すのでした。

武井は松阪を連れてなんとか自力で岸に泳ぎ着きますが、そのとき既に松阪は息絶えていました。松阪の定期入れに入っていたかおるの写真を見つけた武井は、その時初めて、松阪がかおるに寄せていた思いの深さを知り、愕然とします。

同じ頃、麗春は武井を探し求めて海岸を彷徨っていました。麗春の声に気づいた武井は大声でそれに応え、二人はようやく出会いますが、そこへ共産党軍の爆撃が襲いかかり、傷を負った麗春は武井の腕の中で「今度会うときは、戦争のないところで・・・・」とだけ言い残して、息絶えてしまいます。
失意の武井は、麗春の亡骸を抱いて、とぼとぼと海岸を歩いていくのでした。


付記:松阪が亡くなるという設定は、1958年の第2次台湾海峡危機において、読売新聞社通信員だった安田延之記者が遭難、殉職した史実をモデルにしているそうです。



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