『香港の夜』(『香港之夜』)あらすじ




極東通信社の海外特派員である田中弘(宝田明)は、スペインから日本への帰途、香港に立ち寄ります。
飛行機のチケットの関係で48時間のみの滞在しか許されない身、限られた時間を最大限に利用して香港を楽しもうと、香港支局の同僚・石河省三(藤木悠)の案内で、あちこち見て回りますが、夜間立ち寄ったナイトクラブで長旅の疲れが出て倒れてしまいます。

ナイトクラブのホステスで日本語が堪能な謝玉蘭(草笛光子)は、「自分の住むアパートの部屋の隣人が医者だから、診てもらったらいい」と言って、田中を半ば強引に自分の部屋に連れて行きます。
実は、玉蘭の隣人は医者などではなく、漢方薬店に勤める呉麗紅(尤敏)という女性だったのですが、なぜか日本語が出来る麗紅は田中のために薬を調合して、一晩中彼を看病します。

翌朝、すっかり具合のよくなった田中は、同僚、玉蘭、そして麗紅も誘って4人で市内観光に出かけますが、そこで玉蘭がかつて日本人と結婚していたこと、麗紅の母が日本人で、戦乱が激しくなったため一人日本へ帰ってしまい、父も戦後間もなく亡くなって苦労して育ったことを知ります。
その夜、田中は麗紅へのお礼のしるしに、彼女を食事に誘います。田中は美しく聡明な麗紅に心惹かれますが、なにぶん限られた滞在時間のこと、後ろ髪を引かれつつ日本へ帰国します。

日本では、田中を慕う木村恵子(司葉子)が空港に出迎えに来ていました。
恵子の車で通信社まで送ってもらう田中でしたが、彼の心の中からは麗紅の面影が消えることはありませんでした。

帰国報告のための帰省休暇を貰った田中が、両親の墓参りと雲仙温泉で旅館を営む兄に会うために故郷へ帰ると、先回りして雲仙へやってきていた恵子とその妹・明子(浜美枝)が、彼を出迎えます。
が、そこへ通信社から緊急の呼び出し電報が届き、田中は急ぎ東京へ戻ります。
東京へ戻った田中を待っていたのは、香港支局の石河が自動車事故で入院したため香港へ行ってほしい、との知らせでした。

香港へ渡った田中は、同僚の事故の相手が麗紅の勤務先である漢方薬店の車だったことを知り、同僚の見舞いに来た麗紅と再会します。
今回の事故のお詫びにと漢方薬店の主人が田中と支局長を食事に招いてくれますが、その席上で、主人の王(金伯健)が若主人・濟洲(馬力)の妻に麗紅を迎えたいと表明、悩み苦しんだ麗紅は、店を辞めてそのまま姿を消してしまいます。

田中は玉蘭から麗紅がマカオにいることを聞き、マカオの麗紅を尋ねます。彼女は、父の親友で親代わりの張千里(王引)の許に身を寄せていました。
田中は麗紅に愛を告白しますが、彼女は心ならずもそれを拒みます。

傷心のまま香港へ戻った田中の許へ、恵子とその父・隆造(上原謙)が訪ねてきます。田中は恵子に「香港に好きな女性がいる」と告白、観光のため立ち寄ったマカオで偶然麗紅に逢った恵子は、麗紅が田中の意中の女性であることを知ります。

石河の怪我も癒えて日本へ帰ることになった田中は、再び麗紅の許を訪れ、帰国する旨を伝えます。
すると張は、ひそかに麗紅の母の写真を田中に託し、母親を探してくれるよう依頼します。

帰国した田中は、麗紅の母探しを始めますが、なかなか見つかりません。しかし、兄の旅館の泊り客が忘れていった写真が、田中に託された写真と同じであったことから、麗紅の母・好子(小暮実千代)が柳川にいることが判明します。
柳川を訪れた田中は、好子に麗紅と会ってくれるよう頼み、好子の再婚相手・松山(加東大介)もぜひ会った方がよいと快諾、母子は東京で再会します。
その後、麗紅は好子に引き取られて柳川へ行くものの、周囲の人々の好奇と差別の目に耐え切れず、結局香港へ帰ってしまいます。

その頃、田中はラオスで起こった動乱を取材するため、現地への派遣を命ぜられていました。
ラオスへ行く前に香港へ立ち寄った田中は、麗紅に再びプロポーズをします。田中の愛を受け入れる決心をした麗紅はこれを承諾、田中はラオスに向かいますが、結婚を目前に控えたある日、麗紅の許にある知らせが届きます。それは、田中がラオスで殉職した、という訃報でした。

やはり悲しみを抱きながら香港へやって来た恵子と二人、麗紅は愛する田中の面影をいつまでもいつまでも偲ぶのでした。



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