女殺手(The Lady Profassional)
1971年。邵仁枚製作。松尾昭典(麥志和)・桂治洪監督。何莉莉主演。
松尾昭典監督唯一の邵氏作品。
何莉莉が女殺し屋に扮したアクション映画。
松尾昭典監督が、邵氏に招かれて撮ったアクション映画。
この作品が製作された1971年は、松尾監督が所属していた日活が一般映画の製作をやめ、ロマンポルノへと路線を転換した年に当たります。
そんなこんなのごたごたもあって、香港で映画を撮る気になったのだと思いますが、邵氏が日本人監督を招いて映画を製作したのもこの年までで、したがって、邵氏における松尾監督作品もこれ1作のみに終りました(その後、山内鉄也監督の『梅山収七怪』が1973年に公開されていますが、この映画が製作されたのも1971年のことでした)。
ストーリーは、ある組織の依頼でターゲットを殺害した冷酷な女殺し屋・葛天麗(何莉莉)が、今度はその組織から口封じのために命を狙われることになります。復讐を誓った天麗は一人組織に立ち向かい、最終的に組織の黒幕で財界の大物・費慶彦を殺害する、というもので、当時、邵氏の若手トップスターの一人だった何莉莉が、ヒロインに扮しています。
冒頭の遊園地での殺害場面から、激しいカーチェイス、組織が差し向けた刺客と天麗との壮絶な格闘等、ところどころに見どころが配されているのですが、いかんせん、全体的に見ると精彩に乏しい仕上がりです。
冷酷な女のバイオレンス復讐譚ですから、暗ーい雰囲気でいいとは思うのですが、どうにもじめじめしていてやりきれないのです。
何より、松尾監督がアクション映画を手がけていた日活には、石原裕次郎や小林旭、宍戸錠、二谷英明といった魅力的な男優たちがいて、あくまでもヒーローを中心に据えた映画だったのに比べ、当時の香港は女優中心の映画製作体制でしたから、そこらあたり、勝手が違う部分もあったのかもしれません。
松尾監督も何莉莉もお互い手の内を探るのに終始している、というか、かんじんの何莉莉の魅力が、本作ではあまり出ていないような気がします。
井上梅次監督が、何莉莉を使って多くの映画を撮ったのとは対照的です。
さて、本作で松尾監督と共同で監督を務めている桂治洪(1937〜99)は、邵氏から派遣されて、松竹大船撮影所で1年間映画作りを学んだという人物。
香港へ帰ってからは、井上監督や島耕二(史馬山)監督、中平康(楊樹希)監督の助監督を務め、島監督が製作途中で契約切れのため帰国した後を引き継いで完成させた『海外情歌』(1970)で監督デビューしました。
この映画では、助監督ではなく、共同監督に昇進しています。
ところで、一部の香港映画ファンの間では、桂監督は「南洋邪術物の巨匠(?)」として知られていますが、邵氏でカメラマンとして活躍した西本正(賀蘭山)が、後になって「本当は中川信夫監督(言わずと知れた怪談映画の巨匠)を邵氏に呼びたかった」と述懐していましたので、中川監督が香港で桂監督と出会っていたら、かなり面白いことになっていたに違いありません。
残念なことをしたものです。(とりあえづ了)
付記:本作のカメラは、銭岩と王天祐の二人が担当していますが、このうちの銭岩は、もしかしたら日本人かも知れません。ちなみに、この時期、西本正は既に邵氏を退社していました。
主要参考文献:
『邵氏電影初探』(2003年、香港電影資料館)。
『季刊 リュミエール』(1987年、筑摩書房)
『中華電影物知り帖』(『キネマ旬報』臨時増刊。1996年、キネマ旬報社)。
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