『香港の星』(『香港之星』)あらすじ




日本の商社「東南商事」の香港駐在員・長谷川透(宝田明)は、帰国の挨拶のために立ち寄ったソニーの香港オフィスで、故障したラジオを持ってきた王星〔王連〕(尤敏)からソニー社員に間違われて、修理の依頼を引き受けるはめに陥ります。
急ぎの修理依頼でしたが、ラジオの故障の程度があまりにひどいため、新品と取り替えて納品することにし、長谷川は星〔王連〕の家へラジオを届けに行きました。
「ラジオを落としでもしない限り、こんなひどい故障にはならないはずだ」と釘を指す長谷川に、星〔王連〕は悪印象を抱きます。

星〔王連〕は日本の女子医科大学の留学生で、これからまた日本へ行くところでした。
その前に父の許を訪れ、父の物であるラジオも届けます。
星〔王連〕の父・王椿伯(王引)は、難民診療所の医師で、自分の仕事を娘である星〔王連〕に継いでもらいたいと考えていました。
ラジオを渡すとき、星〔王連〕はソニーの社員に失礼なことを言われたと父に告げますが、実は長谷川の言うとおり、ラジオは王がうっかり棚から落として壊してしまったのでした。星〔王連〕は長谷川に対して、申し訳なく思います。

日本へ行く飛行機の中で、星〔王連〕はぐうぜん長谷川と隣の席になります。
ラジオの一件を謝った後、お互いに自己紹介をし、星〔王連〕は、長谷川がソニーの社員ではないことを知ります。

東京へ着くと、星〔王連〕の下宿先の娘・杉本加那子(団令子)と、王の弟子で東大病院に勤めている張英明(林冲)が空港まで迎えに来ていました。
星〔王連〕と長谷川はそのまま別れ、星〔王連〕は二人と一緒に下宿先である杉本家へ向かいました。
杉本家の当主・杉本玄太郎(山村聰)は、日中戦争の最中、王に命を救ってもらったことに恩義を感じ、留学中の星〔王連〕の面倒を見ているのでした。

杉本家に着いた星〔王連〕に、デザイナーの卵である加那子は、モデルの仕事をしてみないかと持ちかけます。
最初は戸惑う星〔王連〕でしたが、撮影で北海道に行けるという加奈子の誘いに乗り、二人はデザイナーの中野女史(久慈あさみ)の一行に加わって、北海道に向かいます。

雪祭り会場やスキー場での撮影等、仕事は順調に進みますが、加那子が仕事の後スキーをしていて男性に衝突しそうになり、避けきれずに転倒して足を捻挫してしまいました。
男性に応急処置を施してもらい、車でホテルの部屋まで送ってもらった加那子を出迎えた星〔王連〕と、送ってきた男性はお互いの顔を見てびっくりします。
男性は、長谷川その人でした。

足を捻挫して歩けない加奈子の代わりに、長谷川は観光案内を買って出、星〔王連〕と長谷川の二人は楽しいひと時を過ごします。
長谷川は北海道出身で、姉(東郷晴子)が営む札幌ラーメンの店に星〔王連〕を連れて行き、ラーメンをごちそうします。
「私の国にも、こんなにおいしいおそばはありません」という星〔王連〕の言葉に、姉夫婦(東郷・加藤大介)は大喜びするのでした。

東京へ戻った後、加那子は北海道でのお礼にと、長谷川を赤坂のクラブ「ミカド」に招きます。
長谷川、加那子、星〔王連〕の3人でテーブルを囲みますが、すっかり意気投合した長谷川と星〔王連〕の様子を見て、長谷川にひそかに思いを寄せる加那子は、1人ひっそりとその場を後にします。

星〔王連〕を誘ってドライブに出かけた長谷川は、星〔王連〕に自分の気持ちを告げ、二人は交際を始めました。
しかし、星〔王連〕の気持ちが長谷川に傾けば傾くほど、彼女の学業は疎かになっていき、心配した張は彼女に忠告をします。
星〔王連〕は、長谷川を愛しながらも、父の意思を継いで医師になることを最優先にし、長谷川に別れを告げます。

自棄になった長谷川は馴染みのバーへ行き、店のマダム・早苗(草笛光子)と飲み明かしますが、
長谷川に興味のある早苗は、わざと酔いつぶれたフリをして長谷川の部屋へ押しかけて、彼を誘惑します。
長谷川は仕方なく、早苗を部屋に置いて一人深夜の街へ出て行きますが、その隙にママは長谷川の写真をひそかに盗み出します。

そんなある日、加那子の勤めるブティックに、早苗が新しく頼んだ洋服の代金を払いに現れました。
早苗が落とした長谷川の写真をぐうぜん拾った加那子に、早苗は「私の彼の写真よ」と言い放ち、加那子は動揺します。

後日、洋服を届けに早苗の部屋を訪れた加那子は、早苗に長谷川との関係を質すものの、軽くあしらわれてしまいます。
傷ついた加那子は、家に戻って一人涙しますが、それを見た星〔王連〕は、加那子が長谷川のことを本当に愛しているのだと悟ります。

一方、再び香港行きを命ぜられた長谷川は、そのことを告げに星〔王連〕の許を訪ねますが、加那子のことが気がかりな星〔王連〕は、「私には、張英明というフィアンセがいます」と嘘を言い、その場を立ち去るのでした。

春、無事国家試験に合格した星〔王連〕は、張と共に香港へ帰ることになりました。
杉本家での祝いの宴の後、星〔王連〕は加那子に、「香港へぜひ来て下さい。香港には、長谷川さんがいます。私のことなら心配しないで。私は、張英明と結婚します」と告げます。
しかし、香港へ戻った星〔王連〕は、愛する長谷川が住むこの土地にいることが耐えられず、父に相談してシンガポール大学病院に赴任してしまいます。

何も知らない加那子が香港へ来てみると、星〔王連〕は既にシンガポールへ行った後でした。
加那子は張に、「お二人は、いつ婚約発表をするのですか?」と尋ねますが、張の口からは、「私たちはそんな関係ではありません。私は、王先生の弟子です。二人は、同じ道を歩む同志にしか過ぎません」と言われて、全ての真相を知ります。
加那子は長谷川に、星〔王連〕がシンガポールに赴任したことを告げ、会いに行くようにすすめます。

星〔王連〕を探しにシンガポールまで来た長谷川でしたが、星〔王連〕はクアラルンプールの病院に転任していました。
長谷川はすぐさまマレー鉄道に飛び乗ってクアラルンプールに向かい、ついに星〔王連〕を探し当てます。

長谷川は改めて星〔王連〕に愛を告白、プロポーズをしますが、星〔王連〕は父の許しを得るまでは返事をすることは出来ないと言い、その日はそのまま別れます。
その夜、父が倒れたという知らせを受け取った星〔王連〕は、急遽香港へ帰ることになり、二人は共に香港へ向かいます。
自宅へ戻って来た星〔王連〕に、父は今まで自分のエゴを押し付けてきたことを詫び、これからは好きな道を歩むようにと告げて、息を引き取ります。

その頃、長谷川の身にも転機が訪れていました。突然、サンフランシスコ支店に転勤になったのです。
長谷川は星〔王連〕の家へ電話を入れますが、悲しみにくれる彼女は電話に出ることが出来ず、長谷川は仕方なく、アメリカ行きの件と飛行機の出発時間を星〔王連〕に伝えてくれるよう、張に頼みます。

長谷川が、サンフランシスコ転勤の辞令を受けに日本へ戻る日。星〔王連〕の父の追悼ミサが、教会で行なわれていました。
長谷川は、空港でぎりぎりまで星〔王連〕を待ちますが、結局彼女は現れず、仕方なく飛行機に乗ります。
ミサの後、張は星〔王連〕に、「王先生の仕事は、私が引き継ぎます。あなたは自分の幸せを追い求めるべきです」と言われ、タクシーに飛び乗って空港へ向かいます。
しかし、タクシーが空港をのぞむ丘の上を走っているとき、長谷川を載せた飛行機が星〔王連〕の頭上を飛んでいきます。
タクシーを降りた星〔王連〕は、飛行機が飛び去っていくのを涙ながらに見送るのでした。



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