『新・金瓶梅』のなぞ
日本ヘラルド映画が配給した『エマニエル夫人』大ヒットに触発されて、一度は止めたポルノ映画製作を復活させた東映が、今度は同じヘラルド配給の『金瓶梅(金瓶雙艶)』に大興奮、似たような古装ポルノ映画を配給・公開してしまったことがありました。
その映画のタイトルは、『新・金瓶梅』。
なんだかまるっきりパクリな邦題ですが、『'97 中華電影完全データブック』(キネマ旬報社)によると、この映画の中文タイトルは『撈家邪牌姑爺仔』とあります。
でもこれって、周潤發の初期作品のタイトルなんですよね。
ええっ?發哥が出てるの?
と思いつつ、調べてみたところ、『撈家邪牌姑爺仔』の英文タイトルが"The
hunter,The Butterfly and The Crocodile"だったのに対して、『新・金瓶梅』のそれは"Confessions of
a(one)
concubine"で、全く異なるものでした。
また、スタッフ・キャストも、前者は「監督:楊權 出演者:周潤發、黄杏秀、張午郎」でしたが、後者は英文から類推したところ、「監督:楊群 出演者:邵音音、楊群、于洋」となり、少しも一致しません。
いったい、この映画の中文タイトルって、何なんでしょう?
英文タイトルで調べた範囲だけで言えば、イタリアで公開されていますし、欧米でもチャイニーズ・エロス物として、それなりに知られた作品のようです。
それにしても、なぜ、他の作品と混同したのでしょうねえ。
楊權と楊群の区別がつかなかったのでしょうか。
などと思いつつ調査をすすめたところ、「キネマ旬報データベース」の作品解説に、王莱が出ているようなことが書いてあったので、『電影欣賞 No.90』(1997年12月、台湾・国家電影資料館)所収の「千面女星演盡人生百態 談王莱的電影表演藝術」(左桂芳)にある王莱のフィルモグラフィを見たら、1976年の項に、
『冤枉〔口阿〕大人』 鳳鳴(製作会社) 楊群(監督) 兪鳳至(脚本)
楊群、恬〔女尼〕、邵音音、于洋(出演者) 原名(原題)『官人我要』
という映画がありました。
『冤枉〔口阿〕大人』というのは台湾公開時のタイトルで、香港でのタイトルは『官人我要』らしいのですが、どうやらこの映画が『新・金瓶梅』ではないかと考えられます。
1976年の香港映画興行収入第5位という、『金瓶梅』(1974年第6位)に負けず劣らずのヒット作です。
しかし、この映画の英文タイトルは"I
Want More"。
海外公開のさいに、改めて別の英文タイトル("Confessions of
〜")が付されたのでしょうか。
うーむ。
付記:『新金瓶梅』の脚本を担当した兪鳳至は、元女優さんで楊群夫人。あの『地獄から来た女ドラゴン』の監督さんです。東映の『大陸流れ者(龍虎雙侠)』にも出演していました。
(2004年8月11日記。2005年9月25日大幅に加筆改稿)
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