尤敏在日本3 (ホノルル・東京・香港) 弐
思わぬ長逗留となったハワイロケもどうにか無事に終わり、尤敏は4月9日にハワイを発ってイースターの休暇を香港で過ごした後、今度は東京での撮影が始まりました。
今回の東京滞在中、尤敏は日本のマスコミに対し、後に夫となる高福球(日本の報道ではエリック・コーとも。建築家。香港・マカオの富豪である高家の御曹司)との交際を認め、仕事と結婚の狭間で揺れる女心を告白しています。
―彼ってどんな人?
「さあ・・・やっぱりワカリマセン(ウフッと笑って)明るくって、ユーモアを解する青年、ね」
―一番惹きつけられたところは?
「やさしくて、ゆきとどいた神経を使ってくれるところかしら。私を女優としてではなく、一人の女として愛してくれますし・・・」
―知り合ったのはいつ?
「ずうっと前。私の父(京劇〔原文ママ。実際には粤劇〕の名優白玉堂)と高さんのお父様が古い知り合いでしたから。高さんは11年前に英国へ留学して、ずっとあちらで生活し、一昨年香港へ帰ってきました」(略)
―高さんからの電話や手紙は毎日でしょうね・・・
「あら、よく知っているのね(といたずらっぽく笑って)香港には撮りかけの時代劇が一本残っていますし、何とかして今月中には帰りたいわ。宝田さんと出演の予定だった『再会』は、撮れるかどうかわかりません」(略)
―理想の家庭は?
「ウフフ・・・それは香港へ帰って、コイビトと相談します。くわしいことは結婚してから聞いてください」
とうとう”恋人”という表現がとび出したが、尤敏の結婚式はおそらく今年の9月か11月になるはずだ。とすれば『ホノルル・東京・香港』が日本のファンにとっては最後の尤敏映画になるわけだが、嫁ぎゆく彼女に、宝田明からの祝福の言葉をつたえておこう。
「いつか冗談半分に”私が結婚式をするときは香港へ来て、友人代表のあいさつをしてね”といってたが、とうとうほんとになったようだ。ぼくとの仲?ぜんぜんダメですよ。結婚して女優をやめるのは惜しいけど、きっといい奥さんになるでしょう。ユー・ミン、ほんとうにおめでとう!」
(「尤敏が香港青年建築家と今秋結婚」 『週刊明星』 1963年5月19日号)
婚約してます!−尤敏−
「私 とても悩んでいます 結婚すれば映画界から引退しなきゃならないし まだまだお仕事をたくさんやりたいし・・・・」
どちらを選ぶか迷っていると胸のうちを語る尤敏−しかしこれこそ嬉しい悩みというべきで 彼女の表情には喜こび(原文ママ)が満ちあふれていた
「ボーイフレンドは数人 だが彼とはここ二年 結婚を前提にした交際をしています」
その名は建築家のエリック・コー氏−家族同士の付きあいで幼なじみだそうだ
尤敏は いま『ホノルル・東京・香港』の撮影で東京に滞在中だが月末(5月末:せんきち注)に帰国してから正式に婚約するものとみられている
(『週刊平凡』 1963年5月23日号)
これをうけて、日本のマスコミの間では、尤敏の結婚・引退説がにわかに現実味を帯び始めました。
5月30日、東京での撮影を終え、尤敏は香港に帰りますが、その際の報道には、
引退?サヨナラ尤敏
三十日の午後 羽田発のPAA機で香港女優尤敏が帰国した−東宝『ホノルル・東京・香港』の出演を終え約二か月ぶりでフィアンセのエリック・コー氏のもとへ帰れるというので彼女は喜色満面 いそいそとタラップを馳け(原文ママ)のぼって行った 帰国後 正式に婚約発表 引退するものとみられている尤敏について 羽田へ彼女を送った東宝・藤本専務は「この夏『再会』を撮ることになっているが すべては彼女次第−十八日に私も香港に飛び キャセイ関係者や尤敏自身と話し合うつもり」と語っていた
(『週刊平凡』 1963年6月13日号)
とあり、次回作『再会』(後述)に尤敏がはたして出演するか否かに、注目が集まっています。
Copyright (C) 2004 "Ryosou Ai no Sazanami" by Senkichi. All rights reserved.