尤敏在日本3 (ホノルル・東京・香港) 参




尤敏の帰国から1ヵ月後の6月30日、『ホノルル・東京・香港』が封切られました。

興行成績は、『東宝50年史』によると「大当り」とのことですが、藤本真澄の回想(『プロデューサー人生 藤本真澄 映画に賭ける』)では「併映作品(『若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん』。ザ・ピーナッツ他出演:せんきち注)の関係もあってか、興行的には前二作ほど成功しなかった」とあり、どちらが本当のところなのか、判然としません(ストーリーはこちら)。

本作は、前作までの2作品とは異なり、軽妙な喜劇に仕上がっています。
尤敏も、わがままでお転婆、しかし内面には複雑で繊細な心を秘めた華僑の女性を演じています。
ただ、設定が設定(ハワイ華僑のため、英語か中国語しかわからない)なので、全編中約80%は英語のセリフなのが、少々疲れます。
尤敏の英語は、どことなくオードリー・ヘプバーンの英語にアクセントが似ていて(声も)、とてもチャーミングです。

作品に対する評価は、「内容がないぜいたくさ」(1963年7月5日付 『読売新聞』夕刊)などという酷評(?)もありますが、「明るく楽しくバカンス気分」(1963年7月2日付 『毎日新聞』夕刊)という好評価も見られます。
『週刊平凡』の「試写室」欄(1963年7月11日号)には、

・・・・観光用映画ともいえるが、風景とストーリーがうまく結びついて絵はがき的でないのがいい。(後略)

とあり、品田雄吉が80点、小森和子が85点を付けています。

わたくし個人の見解としては、1回目に観たときはとても面白かったのですが、繰り返し観ていくうちに「やっぱり尤敏には悲劇が似合う」としみじみ思った次第。
といっても、彼女のコメディ・センスはなかなかのものです。
さすがに、亜洲影后(アジア映画祭主演女優賞)と金馬影后(台湾金馬奨主演女優賞)の栄誉に、計3回輝いただけのことはあります。

終盤、わさび寿司を食べさせられたお返しに、激辛麺(「青椒肉絲麺」と言っていました)を宝田明に食べさせるシーンがあるのですが、すました顔で「こちらは辛いものがお好きだから、辣醤と胡椒をたっぷり入れて差し上げてね。辛ければ辛いほどいいわ」(中国語)と言うところなど、思わずにやりとしてしまいました。

本作の上映も終わり、果たして次回作『再会』に尤敏が出るのかどうか、その去就が注目されていましたが、香港へ帰った尤敏からは正式な態度表明が示されぬまま、製作開始予定の夏を迎えました。



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