尤敏在日本1 (香港の夜) 四




ゴールデンウィークの休暇を箱根で過ごした尤敏は、5月8日から九州・柳川でのロケに参加、その帰りに念願だった京都訪問を果たしました。
12日、日本での撮影も終了して、尤敏はいったん香港へ帰国します。

6月28日、7月1日から3日までの特別ロードショー(於:日比谷スカラ座)で舞台挨拶をするために、尤敏は再来日しました。
宣伝の一環として、29日には日比谷・芸術座での舞台『宝田明と香港の夜』に出演(東京テレビ〔現・TBS〕で放映)、30日にはデパートでのサイン会をこなしました。

そして1日の特別ロードショー初日、劇場入口には東宝の社長以下全重役、そして千葉監督もタキシード姿で居並び、夜に入ると撮影所から派遣された照明技師がライティングを担当するという徹底ぶりの中、スカラ座には尤敏を一目見ようというファンが2万人も押し寄せる大盛況となりました。

一般封切を前に、宣伝にもより一層の力が入り、日劇には『香港の夜』の大看板が掲げられ、尤敏が主題歌を歌ったソノシート付きの暑中見舞絵葉書や尤敏ネグリジェ尤敏スカーフ、中国風うちわ、尤敏の写真入便箋等の関連グッズが、大量に出回りました。
封切までの間、尤敏も積極的に宣伝に協力、大阪の阪急百貨店でサイン会をした際には、「群集に取りかこまれ、地下室から脱出するほどであった」そうです。
また、大阪球場で行なわれていた映画人野球大会にも、東宝マークが入った野球帽をかぶって登場、マウンド上から挨拶を行ないました。

そして7月8日、いよいよ一般封切日を迎えますが、『週刊漫画サンデー』1961年8月12日号(「お盆映画を一人でさらったユー・ミン この香港女優の魅力のすべて」)に掲載された浅草の映画館の初日観客動員数データによれば、

東宝『香港の夜』『大学の若大将』2本立:2250人(浅草宝塚)
ニュー東映『続次郎長社長と石松社員』『金も命もいらないぜ』2本立:1010人(浅草千代田館)
大映『女の勲章』『怪談蚊喰鳥』2本立:780人(電気館)
日活『海の勝負師』『いのちの朝』2本立:670人(浅草日活)
東映『東海の若親分』『怪談お岩の亡霊』2本立:630人(浅草東映)
松竹『あの波の果てまで・続編』『秀才はんと鈍才どん』2本立:470人(浅草松竹)

と、ダントツの1位を記録しています。

『香港の夜』は、最終的にこの年のお盆のナンバー1ヒット映画になり、合作相手の電懋も、香港・台湾・東南アジアで3万米ドル以上の配給収入を手にしたのでした。




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