恋のゴールもゲットだぜ! 2
(『レッツゴー!若大将』)





おなじみ「若大将シリーズ」の第9作目。香港とマカオでロケーションを行っています。

シリーズ各作品でありとあらゆる部活動(体育会中心。あとは得意の音楽)にチャレンジしている若大将が、今回チャレンジしているのはサッカー。
当時(1966年)、メキシコ五輪を前に日本でもサッカー人気が盛り上がりつつあり、若大将シリーズでもいち早くそれを取り入れたのだそうです。
そして「サッカーといえば香港、香港といえばサッカー」とばかり、若大将は全日本学生選抜チームの一員に加わって、勇躍香港に乗り込みます。
あまり知られていないようですが、香港はイギリスの植民地だったこともあって、けっこうサッカーが盛んなのです。ふつーのおばさんも、ふつーにサッカー観戦を楽しんでいます。
1998年のワールド・カップフランス大会のとき、アルゼンチン対日本が引き分けになった翌日ちょうど香港にいたわたくしは、なじみのお茶屋のおばちゃんから「昨日の試合、日本はよくやった!大健闘だったよ!」と話しかけられて、びっくりした思い出があります。

この映画では、香港島にある政府大球場(香港大球場)で試合のロケをしていますが、大球場自体は、現在ではすっかり改装されてしまいましたので、昔の姿を拝めるのはなかなか貴重だといえましょう。
ちなみに、香港映画『香車美人』(1959年、葛蘭主演)にも、香車美人コンテストの会場として、ここが登場します。二つの作品を見比べてみるのも、また一興かもしれません。
ただ、全体に街中でのロケは少なく、若大将と美芳がドライブをするシーンでささっと名所めぐり(皇后像広場、タイガーバームガーデン〔ただし遠景〕、等)をして、あとはレパルスベイ(浅水湾。もしかしたら、お隣のディープ・ウォーター・ベイ〔深水湾〕かも)でのセーリングや、お約束の水上レストラン(香港仔)が登場するぐらいです。
マカオも同様に、ペンニャ教会や大三巴(聖ポール大聖堂跡)、モンテの砦などの名所旧跡紹介でおしまいでした。
『ならず者』(1964年、東映)みたいにスラムなんか登場させないところが、いかにも東宝らしいといえましょう。ま、若大将ですし。


お話はいつものパターン。若大将が澄ちゃんと出会い、すったもんだしたあげくに澄ちゃんからの熱烈な愛の告白があって、二人の恋はぶじ成就、そしてライバルにも快勝というオチです。

シリーズも9作目とあって、星由里子はすっかり大人の雰囲気を漂わせた女性になっているのですが、あいかわらず勝手に怒ったりやきもちを妬いたりと、忙しいことこの上ありません。
若大将のクラスメートを演じる前田美波里が、一人だけ妙に若さピチピチ(死語)で、他のレギュラー陣と比べてちょっとギャップがあるな、と感じてしまいます。が、そう感じたのは私だけではなかったらしく、当時の映画評にも「加山ももう三十歳である。ギターかかえた大学生がムリになったときに、そろそろ備えねばなるまい」(『キネマ旬報』1967年2月下旬号。林玉樹執筆)なんて書かれています。

というわけで、香港・マカオロケ以外はそう代わり映えのしない作品なのですが、名曲『旅人よ』と飯田蝶子のチャイナドレス姿には、捨て難い魅力があります。




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