にっぽんの台湾男星4
ところで、『香港の星』がちょうど撮影中だった1962年5月23日付ニュース映画『大毎ニュース 565』の「3、週刊話題 東南アジアの映画人」に、林沖が登場します。
これは、5月13日から17日まで、韓国・ソウルで開催された第9回アジア映画祭(現・アジア太平洋映画祭)の終了後、日本へ立ち寄った各国映画人の模様を映像におさめたもので、歓迎パーティーの席上、唐寶雲や穆虹(写真向かって右。左は林翠)といった中央電影公司所属の女優をエスコートする林沖の姿も、ばっちり映っています。
おそらく、来日した台湾代表団の通訳として、彼らに同行していたのでしょう(くわしくは、こちらをご参照下さい)。
『香港の夜』の後、林沖は10月20日公開の東宝映画『やま猫作戦』に出演しました。
この作品は、佐藤充、加山雄三、夏木陽介主演による戦争アクション映画『どぶ鼠作戦』に続く映画で、わたくしは残念ながら未見なのですが、林沖は中国人ゲリラを演じているようです。
台湾生まれの日台ハーフである林沖が、大陸の中国人や香港人しか演じることができないところに、日本の芸能界で活動することの限界を感じます。
1962年も残り少なくなった11月、林沖は26日放送の『夫婦百景』第238回「あて外れ夫婦」(NTV)に出演、そして年が明けて1963年となり、3本目の映画出演が決まりました。
『香港の星』に続く尤敏・宝田明コンビの第3作『ホノルル・東京・香港』です。
この映画での林沖の役どころは、尤敏演じる呉愛玲の許婚で、日本留学経験のある青年・鄭浩。
子供の頃、双方の親同士が決めた仲でしたが、ハワイ(呉愛玲)と香港(鄭浩)、離れ離れに育ったため、お互い面識はなく、実は鄭浩は愛玲の妹で香港育ちの愛蘭(張慧嫻)と恋仲になっていました。
遠くの許婚より近くの許婚の妹、というわけですね。
しかし、このおかげで密かに思いを寄せ合っていた愛玲と岡本雄一(宝田明)の2人は、ぶじ婚約にこぎつけることができたのでした。めでたしめでたし。
本作は香港とハワイロケを行いましたが、林沖は香港ロケには参加したものの、ハワイの件では出番がないためロケには参加できませんでした。
この映画の後、林沖は、クレージーキャッツ主演の香港ロケ映画『香港クレージー作戦』にも香港人青年実業家・汪の役で出演していますが、ここではスタジオ撮影での出番のみで、香港ロケにすら参加していない模様です。
というわけで、この年(1963年)、林沖は2本の映画に出演、しかしながら、やはりここでも香港人の役しか演じることが出来ませんでした。
一方、テレビドラマにおいては、前年に引き続き『夫婦百景』(NTV)の第279回「男尊女尊」(9月9日)、第292回「素敵な半人前」(12月16日)、さらにはNET(現・テレビ朝日)の『孤独の賭け』(10月4日〜1964年3月27日。天知茂、小川真由美主演)にも出演していますが、詳しい役どころは不明です。
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