尤敏在日本2 (社長洋行記 正・続、香港の星) 弐
前頁でも述べた通り、『社長洋行記』と『続社長洋行記』は、1962年4月29日と6月1日にそれぞれ公開されました。
どちらも監督は杉江敏男、脚本は『香港の星』と同じ笠原良三が担当しています(ストーリーはこちら)。
「これから何かが起こるぞ!」とさんざん期待させておいて、あっさり「続編をお楽しみに」と終わってしまうあたり、なかなか計算高い作りの映画です(社長シリーズは、このようにだいたいが「正編・続編2本で完結」というパターンになっています)。
この2本のうち、特に前者はゴールデン・ウィークにあわせて公開されて、大当りをとったそうです(同時上映『どぶろくの辰』。稲垣浩監督、三船敏郎主演)。
続編はともかく、正編の前フリ(香港へ行くまで)が非常に長いので、シリーズのファンには面白くても、それ以外の人(特に外国人)にはなんだかだらだらしているな、と思われるかも知れない映画ではあります。
ちなみに、香港で公開された際には、正編と続編を編集して1本にした上で、『三紳士艶遇』というタイトルで上映された模様です(1963年7月)。
おそらく、正編の前半部分を大幅にカットしたものと思われます。
『日刊スポーツ』(1962年5月7日付)に載った正編の批評(小森和子)には、
・・・・サッソウとスポーツ・カーをかるユー・ミンは桂樹君ならずともイカれるミリキ。女の子に頼まれた買い物に汗ダクの大介を助ける彼女もほほえましく、その彼女にあやしげなる中国語をあやつって近づく森繁も面目躍如。(以下略)
と、尤敏に好意的な評価をしています。
また、続編に関しては、『読売新聞』(1962年6月5日付 夕刊)に批評がありますが、
・・・・内容のたわいなさをいうのはヤボ。これだけスターの芸を楽しませてくれるのはやはりゴリッパというほかない。(以下略)
と、偉大なるマンネリを称えています。
続編の最後、尤敏の婚約者として三船敏郎が登場しますが、このキャスティングは秘密にされた上、新聞広告中で、
劇中、尤敏の婚約者になる世界的大スターは誰?解答を官製ハガキで千代田区有楽町1−14東宝宣伝部「続社長洋行記懸賞係」宛お送り下さい。正解者は抽選の上100名様に尤敏とそのスターの共演スチールを進呈いたします。発送を持って発表にかえさせていただきます。
とクイズを出題、宣伝に活用されました。
といっても、それ以前に「三船、ユー・ミンの婚約者に」(4月24日付『日刊スポーツ』)なんていう記事が出ていますから、いわば周知の事実だったようです。
正編や、この次の作品である『香港の星』での尤敏のチャイナドレスの着こなしを見ていると、『花様年華』の張曼玉(マギー・チャン)のチャイナドレス姿は、尤敏あたりをお手本にしたのかなあと思えてきます。
そういえば、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督が、木村拓哉を『2046』に起用しようと思ったきっかけは、写真集に載っていた木村の写真(清朝の貴婦人の装束を着けたもの)が、古装片(時代劇)での尤敏(『深宮怨』の董小宛)を彷彿とさせる姿だったかららしいです。ほんとか?
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